廃棄物ゼロの家づくりへ

サーキュラーコットンファクトリーの現場から、工務店として宣言したいこと

CCF 代表理事 渡邊智惠⼦さんからのメッセージ

はじめに ― なぜ、2度足を運んだのか
深健工舎は群馬県前橋市を中心に、自然素材をつかった高気密、高断熱・高耐震の快適な健康住宅を、新築、リノベーション、リフォームで手掛ける、一級建築士事務所を併設の大工工務店です。

こんにちは。深健工舎の一級建築士で大工のカズです。

先日、東京にあるサーキュラーコットンファクトリー(以下CCF)代表・渡邊智惠子さんの自邸兼ショールームを、二度目に訪問してまいりました。

きっかけは、CCFが主催された「第6回 暮らしのお話会 ― 自然素材の家を、社会のあたりまえに」という見学会です。設計を担当されたAtelier Bio・新井かおりさん、5’st・久保田恵子さん、結めぐる・篠崎未歩子さんによる現場説明。そして施工を担当された株式会社天然住宅 代表・田中竜二さんのお話。さらに、現場監督さんから直接、施工の実際を伺うことができました。

一度で終わらなかったのは、初回で受けた印象が、時間を置くほどに「これは、うちの工務店が向かうべき方向を、はっきり示してくれている現場ではないか」と、深く残り続けたからです。

今日は、一級建築士として、また大工工務店の二代目として、この訪問で見て・聞いて・触れたことを率直に書き残したいと思います。同時に、これは深健工舎として「これからこう仕事をしていきます」という宣言でもあります。

第1部 ― CCFという取り組みが問いかけているもの

CCFは、日本にオーガニックコットンを広めた第一人者である渡辺智惠子さんが立ち上げた一般社団法人です。理念は、いたってシンプル。

「使うからには、最後まで責任を取る」

背景には、世界の廃棄物の内訳という重い数字があります。

  • 繊維廃棄物 … 約17〜18%
  • 建築廃棄物 … 約40%

つまり、繊維業界と建築業界を合わせると、世界の廃棄物の半分以上を占めるということです。この二つを、業界の垣根を越えて結び直そうというのが、CCFの活動の核心です。

私たち工務店は、この40%の当事者です。ここから目を逸らして「良い家づくり」を語ることは、もうできない時代に入っているのだと思います。

第2部 ― 現場で確かめた建材たち

CCFで扱われている建材のうち、私が現場で実際に触れて評価したものを、順にご紹介します。

① CCFボード(サーキュラーコットンボード)

古着と古紙を粉砕し、水と混ぜて、和紙のように漉いてつくられるボードです。焼却工程を通さないため、製造時のエネルギー負荷が低いのが特徴。

  • 厚み 5mm:廃棄繊維使用率 90%
  • 厚み 2mm:廃棄繊維使用率 100%

大工の目で触ってみて、まず感じたのは調湿性のよさと、音の吸収の柔らかさです。設計担当の新井さんによると、実際にオフィスに施工した事例では、音の反響が抑えられ、冷暖房効率も向上したとのこと。数字だけでなく、体感で違いがわかる素材でした。

貼り方(横張り・縦張り)や、目地に真鍮や色糸を挟む工夫で、表情が大きく変わる。「素材が地味なのではなく、施工者の腕で表情が生まれる」——これは大工にとって、とてもやりがいのある素材です。

ゴミゼロウォール

530WALL(ゴミゼロウォール)

アップサイクル建材の先駆者・日本エムテックス社との共同開発品。様々な色の繊維廃材を混ぜ合わせることで、塗装をせずに、独特の落ち着いたグレーが自然に生まれる仕上げ材です。

特に私が注目したのは二点。

  • 不燃認定を取得している(廃材由来でありながら、建築基準法の内装制限に対応可能)
  • 万が一剥がれても、指で押し付けるだけで補修できる

子育て世代のお住まいで、リビングやキッチン周辺に自然素材を使いたいというご要望は多いのですが、内装制限(建築基準法第35条の2関連 = 火災時の安全のため、火気を使う部屋の壁・天井に燃えにくい材料を求める規定)が壁になることがよくあります。ゴミゼロウォールは、その壁を素直に越えている素材です。

サーキュラーコットンペーパー(和紙)

今回、二度目の訪問で、私があらためて可能性を感じたのがこの和紙です。

・サーキュラーコットンペーパー:廃棄繊維100%使用。土佐和紙専門メーカーの株式会社モリシカさんが製造。

・洛水紙(らくすいし):再生コットン原料50%使用。株式会社モリサさんが製造。

土佐和紙という日本の伝統工芸の技術が、廃棄繊維という現代の課題と結びついている——このことに、私は素直に感動しました。伝統工芸は「昔からあるもの」ではなく、時代の課題を解く道具として、今も生きている技術なのだと再認識しました。

建築の現場では、次のような使い方が考えられます。

  • 建具(襖・引き戸・室内ドア)の表面材
  • アクセントウォールの仕上げ
  • 照明の透光材(和紙特有の柔らかい光)
  • サイン・室名札・看板類

「クロスを貼るか、塗るか」の二択ではなく、「和紙で仕上げる」という第三の道が、確かにここにあります。

第3部 ― 渡邊邸プロジェクトの現場から

見学会の中心となったのは、約90平米・メゾネット型マンションのリノベーション事例、通称「循環する渡邊邸Project」です。施工を担当されたのが天然住宅の田中竜二さん率いるチーム。現場監督さんからも、生の話を伺いました。

一番衝撃を受けた数字

通常のリノベーションで2トントラック5〜6台分出る廃棄物が、今回は3台分に収まった。

半分近い削減です。しかもこれは、特殊な技術で実現したのではありません。徹底されたのは、次の一点でした。

「既存のものを、極力剥がさず、上から貼る・塗る」

  • 既存のビニールクロスは剥がさず、その上にCCFボードやゴミゼロウォールを施工
  • 既存の扉には、和紙を揉んで貼る/布地(施主提供の着物の帯)を貼る
  • 既存サッシは残し、内窓を追加して二重化 → 断熱性能を向上
  • 外気に面する壁の内部には、衣類の粉砕物を断熱材として吹き込み
  • キッチン設備も可能な範囲で残し、面材だけ更新

現場監督さんは、「剥がさない判断」の一つひとつが、実は現場の技量を問われる仕事だとおっしゃっていました。剥がして新品にする方が、実は現場としては楽だと。「残す」ことの方が、腕が要る。この言葉が、私には強く残りました。

第4部 ― 一級建築士・大工として、正直に評価してみる

さて、ここからは、業界の同業者に向けた率直な話です。

理想は「剥がして下地から」。しかし……

正直に申し上げます。私自身の理想は、ビニールクロスは剥がして、下地から自然素材で仕上げることです。接着剤にも徹底的にこだわれる。壁体内の呼吸も自然にできる。経年変化も読みやすい。これが建築士としての本音です。

しかし——「廃棄物を出さない」という物差しで見ると、ビニールクロスの上から自然素材を施工することは、決して悪い選択ではない。

むしろ、私は堂々とお施主さまにお勧めできる方法だと考えるようになりました。

剥がせば、それは産業廃棄物になります。ビニールクロスは高温焼却か埋立てしか処理方法がなく、環境負荷は小さくない。そこを上から自然素材で覆うことで、廃棄物を出さず、しかも室内の空気環境(調湿・吸音・化学物質からの遮断)は確実に良くなる。

これは、理想を捨てることではなく、理想を現実の中でどう成立させるかという、実務家の判断です。

ただし、条件がある ― 接着剤

一つだけ、絶対に譲れない条件があります。接着剤の選び方です。

せっかく仕上げに自然素材を使っても、下地に化学物質だらけの接着剤を使ってしまえば、意味が半減します。ホルムアルデヒド、VOC(揮発性有機化合物 = 常温で気化して室内空気を汚染する物質)を含まない接着剤を選ぶ。ここは工務店として、絶対に妥協してはいけないところです。

自然素材を「表面だけ」で扱わない。裏側まで含めて自然素材である——この姿勢を保ってこそ、施主さまに対して胸を張れる仕事になります。

第5部 ― 天然住宅・田中竜二さんのお話から学んだこと

第二部のお話会で、株式会社天然住宅・代表取締役 田中竜二さんが語られた内容は、私の考えを整理してくれました。

森と町をつなぐという発想

日本の人工林の荒廃は、木材の「出口」がないことが原因の一つです。天然住宅では、宮城県栗駒の林業者から直接木材を仕入れ、中間マージンを削減して山側に適正な対価を還元。伐採した木は、構造材 → 内装材 → 家具 → 燃料と、カスケード利用(段階的に無駄なく使い切ること)を徹底されています。

これは、私たち群馬の工務店にとっても他人事ではありません。地元の山と、地元の工務店がつながる仕組みをどう再構築するか。深健工舎として、真剣に考えていくべきテーマです。

低温乾燥という選択

一般的な人工乾燥(KD材)は120℃以上の高温で行われます。天然住宅では、60℃以下の低温乾燥にこだわっている。木の油分と細胞構造を壊さないためです。

低温乾燥の杉板は、足触りにしっとりとした油分が残り、37〜40℃という人肌に近い温もりを感じさせる。大工として、無垢材の扱いには一家言あるつもりでしたが、この「乾燥温度による違い」は、あらためて奥が深いと感じ入りました。

日本の住宅寿命はなぜ約30年なのか

田中さんは、日本の住宅の平均寿命が約30年であることを問題視されていました。原因は、素材選びと施工の考え方にある、と。

  • 壁内結露を防ぐための通気層の確保
  • 水セメント比を50%以下に抑えた基礎コンクリート(理論上300年もつ)
  • LCA(ライフサイクルアセスメント = 建材の製造から廃棄までの環境負荷を総合評価する考え方)の視点

一つひとつは、派手ではない。しかし、この静かな仕事の積み重ねこそが、100年の家をつくるのだと、あらためて教えられました。

楽しい作品が並んだ同時開催のCCFショールーム ギャラリー『小湊好治 展』ご本人も登場で楽しいヒトトキでした

第6部 ― 業界へ、率直に問いたいこと

ここからは、同業の工務店・設計者・建材メーカーの皆さまへの、私からの率直な問いです。

なぜ「ビニールクロス標準」を、私たちは疑わないできたのか

住宅の90%以上でビニールクロスが使われている——この数字は、業界の常識であり、同時に業界の宿題です。

  • 施工が早い
  • 単価が安い
  • 選択肢が豊富

理由はよくわかります。私自身、現場で数えきれないほど貼ってきました。しかし、その家が20年後、30年後に解体されるとき、ビニールクロスは高温焼却か埋立てされる。次の世代に、私たちはゴミを残しているのです。

ビニールクロス、クッションフロア、複合フローリング、窯業サイディング、この四点セットからの脱却は、業界全体で真剣に議論されるべきだと考えます。

「塗り替える」「貼らずに残す」という選択肢を、もっと堂々と提案しよう

大規模改修ありきの見積もり文化は、正直、そろそろ卒業する時期です。既存を活かす選択肢を、堂々と、根拠を持って提案できる工務店になる。それが、これからの「診断力を持った工務店」の姿だと思います。

外壁リフォームで、安易な塗装の繰り返しを止めよう

塗装業者さんだけに任せるのではなく、家全体を診断できる工務店が、劣化状況に応じて 塗装・カバー工法・貼り替え の中から最適解を選び、施主さまに説明する。これは、工務店の本来の仕事です。安易な塗り重ねは、いつか必ずツケを回します。

第7部 ― 一級建築士の大工の墨出しはゴミを出さないから始まる

一級建築士の大工の墨出しは、柱の位置だけを追う作業ではありません。私の頭の中では、その家の解体の時までを設計の前から考えます。
二度の訪問を経て、深健工舎として、これから次の四つを進めていくことをお約束します。

一、リノベーションでは、「剥がさない選択」を積極的に提案します。

既存を活かし、廃棄物を出さない工夫を、お施主さまと一緒に考えます。CCFボード、ゴミゼロウォール、サーキュラーコットンペーパーは、そのための有効な選択肢として、深健工舎として学び、扱っていきます。

二、新築から、ビニールクロス・クッションフロア・複合フローリング、窯業サイディングを基本的に使わない。

将来ゴミにならない素材を、いま選ぶ。これは私たちの世代が果たすべき責任だと考えます。

三、接着剤・下地材まで含めた「素材の裏側」にこだわります。

表面だけの自然素材ではなく、見えない部分まで含めて誠実な仕事をします。

四、「診断できる工務店」であり続けます。

塗装か、カバー工法か、貼り替えか。あるいは「今は何もしない」という判断も含めて、家全体を診た上で最適解をご提案します。

おわりに ― 職人として受け継ぐべきもの

渡邊邸を後にしながら、私は自分の父の代からの現場を思い返していました。

父の代、そして私の代。工務店が受け継ぐべきは、道具や技術だけではありません。「使ったものに、最後まで責任を持つ」という職人の姿勢そのものです。

CCFの取り組みは、その姿勢を、現代の言葉と技術で、もう一度私たちに突きつけてくれます。渡辺智惠子さんが繊維の世界で貫かれてきた哲学と、田中竜二さんが林業と建築の間で紡いでこられた実践。この二つが交差する場所に、私たち工務店がこれから立つべき現場があります。

代表の渡邊さんの提案で参加者全員で 一歩前へ ポーズ📷

「見習わなければいけない」——これが、二度目の訪問を終えた私の、率直な気持ちです。同時に、「見習うだけではなく、群馬で自分の言葉と手で実行していく」——これが、深健工舎としての宣言です。

もし、リノベーションや新築で「自然素材を使いたい」「ゴミを出さない家づくりをしたい」とお考えの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、深健工舎までご相談ください。
私自身が二度足をを運んで確かめた素材と考え方で、じっくりお話しさせていただきます。
環境の事も考えて、見えないところまでこだわる建築。
ゴミを出さない家づくりを 群馬県前橋から
深健工舎

参考リンク

  • サーキュラーコットンファクトリー(CCF): https://www.circularcottonfactory.jp/
  • CCF建材の共同開発パートナー:日本エムテックス株式会社(ゴミゼロウォール)
  • サーキュラーコットンペーパー製造:株式会社モリシカ(土佐和紙)
  • 洛水紙 製造:株式会社モリサ
  • 施工:株式会社天然住宅(代表取締役・田中竜二さん)
  • 設計:Atelier Bio 一級建築士事務所(新井かおりさん)/5’st 一級建築士事務所(久保田恵子さん)/結めぐる株式会社(篠崎未歩子さん)


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