~道具でしのぐ。そして、そもそもの「設計」で解く~
深健工舎は群馬県前橋市を中心に自然素材を使った高気密高断熱高耐震の健康住宅を新築、リノベーション、リフォーム工事を行う設計事務所併設の快適な住み心地の良い家をつくる大工工務店です。
こんにちは 毎日暑い日が続いていますね
深健工舎の一級建築士・大工のカズです。

今年の夏も「窓辺の暑さ」に困っていませんか
「エアコンをつけているのに、窓際だけムッと暑い」
「西日が当たる部屋だけ、夕方になると急に温度が上がる」
「電気代が去年より高くなった」
こうしたお悩み、この夏も本当に多くいただきます。実はこれ、我慢の問題ではなく、家に入ってくる熱の”入り口”にはっきりした理由があります。その入り口とは、窓です。
資源エネルギー庁(国のエネルギー政策を担う経済産業省の外局)の公表資料によると、夏の冷房時に室外から室内へ侵入する熱の、約7割が窓などの開口部(かいこうぶ=窓や玄関など、外気とつながる開いた部分)から入ってきます。壁や屋根ではなく、窓が最大の”熱の入り口”なのです。逆に言えば、窓さえきちんと守れば、家の暑さの大半は防げるということです。[資源エネルギー庁]
まず今日からできること ―― 日差しは「窓に当たる前」に止める

いちばん大事なポイントからお伝えします。日差し対策は、カーテンやブラインドを”室内側”に付けるより、”室外側”に付けるほうが、はるかに効きます。同じ資源エネルギー庁の資料でも、こう明記されています。
ブラインドなどを設置する場合は、窓の外側に取り付ける方が、内側に取り付けるよりも、3倍近くの効果があります。
— 資源エネルギー庁「省エネ住宅」より

室内側のカーテンは、いったんガラスを通り抜けて家の中に入ってきた熱を受け止めるだけ。一方、窓の外で遮れば、そもそもガラスに日が当たる前に止めるので、熱が家に入りません。だから、今すぐできる対策としては、次の「窓の外の道具」が効きます。
| 道具 | 遮熱の効き | 特に効く場所 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| よしず(葦簀) | ◎ 隙間の通気で熱をためにくい | 東西の窓・掃き出し窓の前 | ◎ 最も手軽・安価 |
| サンシェード | ○ 濃色の遮熱生地なら高い | 南〜西の窓(生地しだい) | ○ 手頃 |
| 外付けブラインド | ◎ 角度調整でき最も安定 | 明るさも欲しい窓全般 | △ 高め・工事必要 |
💡 子育て世代の方へ・今日からできる一歩
「全部やる」より、まずいちばん暑い窓(多くは南か西)に、よしずかサンシェードを1枚。それだけで、お子さんが昼寝をする部屋の体感はかなり変わります。道具はホームセンターでもすぐ手に入ります。
でも、道具だけでは防ぎきれない日差しがある
よしずやサンシェードは、今日からできる心強い味方です。ただ、正直にお伝えすると、道具には限界もあります。とくに、夏の朝日と夕方の西日。これらは太陽が低い位置から、窓に真正面から差し込んできます。日除けを1枚垂らしただけでは、隙間から差し込む光を完全には止めきれません。
では、プロはこの「防ぎきれない日差し」を、どこで解いているのか。答えは、道具よりもっと手前――家を建てる、いちばん最初の段階にあります。ここから先は、少し専門的ですが、家づくりを考えている方にこそ知っていただきたい「職人の視点」の話です。
一級建築士・大工の墨出しは、暑さ寒さから始まる

一級建築士である大工の墨出し(すみだし=建物の基準線を墨で床や地面に打つ、家づくりの最初の位置決め作業)は、柱の位置だけを追う作業ではありません。
私の頭の中では、太陽の南中高度(なんちゅうこうど=太陽がその日いちばん高く昇ったときの、地面からの角度)を読んで、窓と軒(のき)をどこに、どのサイズで配置するか――それが、暑さと寒さへの対抗の線引きとして、柱の墨より先に重なって見えています。
冬は太陽が低い位置にあります。その低い角度の日差しが家の奥まで入ってくるように、南向きの窓をどのくらいの大きさで取るのか。その窓の上に「軒」や「庇(ひさし=窓や出入口の上に張り出した小さな屋根)」をどのくらいの深さで付けるのか。これらは単なる「日当たりの良さ」ではなく、冬の暖かさと夏の涼しさを両立させる、構造的な決断なのです。
💬 建築士としての本音
「高気密・高断熱」という言葉が独り歩きしがちですが、断熱材はあくまで“入ってきた熱を逃がさない・入れない”ための道具です。その手前で、そもそも夏の熱を入れない・冬の熱を招き入れるという窓と軒の設計ができていなければ、道具は本来の力を出せません。よしずが下流の道具なら、軒の設計はいちばん上流の”効かせどころ”です。
季節ごとの太陽高度を、窓と軒で読む
東京を例に挙げます。冬至(12月22日ごろ)の南中高度は約31度、夏至(6月21日ごろ)は約78度。この約47度の差が、家の中に入ってくる日差しの量を劇的に変えます。[国立天文台の公式値にもとづく]
| 季節 | 南中高度(東京) | 日差しの入り方 | 設計でどう扱うか |
|---|---|---|---|
| 冬至(12月下旬) | 約 31度(低い) | 南の窓から、リビングの床まで奥深く届く | 入れる。無料の暖房として活かす |
| 春分・秋分 | 約 55度 | 中間 | 軒でほどよく調整 |
| 夏至(6月下旬) | 約 78度(真上近く) | ほぼ頭上から照りつける | 遮る。軒の影で窓を覆う |
冬の低い日差しは、南の窓から入るとリビングの床までたっぷり届きます。その暖かさは「無料の暖房」として、冬の暖房費を減らしてくれます。ところが同じ窓が、夏の高い日差しをそのまま入れてしまえば、室温は急上昇し、エアコンの負担が増える。
その差を埋めるのが、「軒の深さ」です。冬の低い日差しは入れて、夏の高い日差しは遮る。同じ窓・同じ場所なのに、季節で真逆の働きをさせる――これを可能にするのが軒であり、その計算を墨出しの段階で正確にしておくことで、その後の暑さ寒さ対策は、ぐっと素直にまとまります。軒の出夏至の日差し 約78°高い → 軒でカット窓は日影で涼しい冬至の日差し 約31°低い → 床の奥まで届く無料の暖房になる室内屋外(南側)軒の深さの断面図:同じ軒先(赤い点)を、夏至(約78°)の高い日差しは通れず窓の外に落ち、冬至(約31°)の低い日差しは通って室内の床奥まで届く。角度は国立天文台の東京の南中高度にもとづく。
見落としやすい、部屋ごとの日差しの違い
新築やリノベーションのご相談で、私が必ず確認する場所があります。「寝室の窓の向き」「子ども部屋の日当たり」「北側の部屋の冬の寒さ」「南西の窓からの夕日の強さ」です。
子どもが昼寝をする寝室に、夏の西日がばんばん入ってくれば、室温は急激に上がります。一方、北側の子ども部屋は冬、日差しがまったく入らないために壁が冷たくなり、結露(けつろ=冷えた面に空気中の水分が水滴になること。カビの原因)のリスクも高まります。こうした部屋ごとの温度差は、エアコンの能力選定にも影響します。
だから、「この部屋には、どの季節に、どのくらいの日差しが必要か」を先に見定めておく。そして、その日差しを最大限に活かすための窓と軒の配置を決めておく――これが、家族が一年を通じて快適に暮らすための、最初で最も大切な設計です。冒頭でお話しした「窓の外の日除け」は、この設計で守りきれない分を、あとから足す頼れる補助役なのです。
「墨を打つ段階で、ご家族の一年の暮らしを、一度頭の中で見直す。」
それが、パパ建築士であり、現場に立つ大工でもある私の流儀です。
快適さは、設計の順番で決まる
暑さや寒さを我慢する暮らしではなく、家そのものが快適さをつくる住まいへ。今日からできるのは、よしずや外付けブラインドで窓の外の日差しを止めること。そして、家を建てる・大きく直すときの本当の出発点は、高価な設備でも分厚い断熱材でもなく、柱を立てる前の墨、そして窓と軒の一本の線にあります。
深健工舎では、新築の設計はもちろん、今のお住まいの「どの窓が、どの季節に暑い/寒いのか」を一緒に読み解くところから、日除けの選び方・断熱リフォーム・窓リフォームまでご相談を承っています。家族の一年の暮らしを、一度いっしょに墨で描き直してみませんか。
参考リンク(一次情報)
- 資源エネルギー庁:省エネ住宅(窓からの熱の出入り・日射遮蔽) — https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/
- 国立天文台:夏至の南中高度(東京で約78度) — https://www.nao.ac.jp/news/blog/2021/20210621-summer-solstice.html
- 国立天文台:太陽の南中高度の計算方法 — https://www.nao.ac.jp/faq/a0109.html
- Forward to 1985 energy life(暮らし省エネマイスター検定) — https://to1985.net/builder/examination/
- 日本エネルギーパス協会(エネルギーエージェント/エネルギーパス) — https://energy-pass.jp/
この記事を書いた人
深健工舎(大工工務店・設計事務所併設)二代目|一級建築士・大工
現場で墨を打つ大工でありながら、一級建築士として設計も手がける、二足のわらじの家づくり職人です。地震・耐震から、暑さ寒さ・省エネまでを一本の線でつなげて考えることを信条にしています。子育て世代のパパ建築士として、「我慢しない、健康で快適な住まい」をお客様と一緒につくっています。
保有資格・所属
- 一級建築士
- 暮らし省エネマイスター一般社団法人 Forward to 1985 energy life 認定 / 家庭の省エネ・省エネ住宅の暮らし方をアドバイスできる資格
- エネルギーエージェント日本エネルギーパス協会 認定 / 住まいの燃費(省エネ性能)を数値化する「エネルギーパス」を計算できる資格。ヨーロッパの制度を日本に取り入れたもの
本記事で「窓と軒で暑さ寒さが決まる」とお伝えしたのは、単なる経験則ではありません。住まいのエネルギー消費を数値で読み解く「エネルギーエージェント」の視点と、暮らし方から省エネを提案する「暮らし省エネマイスター」の知識を、大工としての現場感覚と重ね合わせた結論です。数字と手の両方から、ご家族の一年の暮らしを設計します。住まいの快適術シリーズ
我慢しない、涼しい家・暖かい家づくり


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