家の強さは、等級の「数字」だけでなく、その等級をどう確かめたかで変わります。
2025年版の「グレー本」を教材にした許容応力度設計のセミナーで学び直した、耐震等級と許容応力度計算の考え方を、これから家を建てる方にもわかる言葉でまとめます。
今週のブログ / 新築住宅の耐震(構造設計)
「耐震等級3」は数字より中身|グレー本2025年版のセミナーで、許容応力度設計を基本から学び直してきました

建築基準法の先へ。耐震等級、壁量計算、許容応力度計算、そして「地震のあとも住み続けられる家」の考え方
一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜/深健工舎
ごあいさつ
こんにちは。
深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。
深健工舎は、群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、渋川市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の健康住宅を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛ける、設計事務所併設の大工工務店です。
快適で住み心地の良い家をつくることを、私たちの仕事の芯にしています。
前回は、群馬県の「木造住宅耐震リフォーム達人塾」で学んだ、既存住宅の耐震改修の話を書きました。今回はその新築版です。先日、公益財団法人 日本住宅・木材技術センター主催の、演習で実践的に学ぶ「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」セミナーを受講してきました。
この記事の主役になる言葉を、最初にやさしく言い換えておきます。許容応力度計算とは、地震や風、雪、建物と家具の重さなどで家にかかる力を一つひとつ計算して、柱・梁・接合部の一本ずつが、その力に耐えられるかを確かめる方法です。いわば、家じゅうの部材に一本ずつ健康診断をするようなもの。同じ「耐震等級3」の家でも、この方法で確かめているかどうかで、中身の確かさが変わってきます。
■ このブログで学べること
- 前から行きたかったセミナーに、ようやく行ってきました
- 私が構造のルールにこだわる理由
- 建築基準法の耐震基準は「最低限」のライン
- 住宅性能表示制度と「耐震等級」
- 同じ「等級3」でも、確かめ方が違う
- なぜ「許容応力度計算で等級3」にこだわるのか
- 数字の裏にある「設計の考え方」
- まとめ|これから家を建てる方に、確認してほしい3つのこと
- 家のこと、暮らしのこと、気軽にご相談ください
1 前から行きたかったセミナーに、ようやく行ってきました

先日、公益財団法人 日本住宅・木材技術センター主催の、演習で実践的に学ぶ「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」セミナーを受講してきました。全国4会場で開かれ、私が参加したのは東京会場(霞が関)です。講師は、1日目が東京大学名誉教授の稲山正弘先生、2日目が木構造技術センター センター長の小谷竜城さんでした。
昨年の法改正で、構造計算の必要性を感じている同業者が多いのでしょう。会場は満席でした。
設計者のあいだで「グレー本」と呼ばれている本があります。正式には『木造軸組工法住宅の許容応力度設計』という、木造住宅の構造計算の進め方をまとめた本で、表紙の色からそう呼ばれています。その2025年版が出たこと。そして当社の新築住宅は、基本仕様に許容応力度計算を含めていること。この2つがあって、一度基本から学び直したいと思っていました。いつもお世話になっている先生からお誘いいただいたのも、背中を押してくれました。
内容は正直、高度でした。それでも要所要所で、建築設計の基本的な考え方と、「設計する人たちが同じ物差しを持つこと」の大切さを改めて教えられた一日でした。
いつ大きな地震が来てもおかしくない日本で家を建てる者として、身の引き締まる思いです。
2 私が構造のルールにこだわる理由
少し自己紹介をさせてください。私は一級建築士の資格を持ち、大工として現場の墨出し(建物の基準となる線を出す作業)も自分でやります。設計する立場として、木造住宅でも最低限守るべき構造のルールがある、と考えています。
学生時代、先生からは「木造は自由に作ることができる」と言われて学んできました。たしかに木造は間取りの自由度が高く、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べても自由に見えます。けれど今振り返ると、自由に見えていたのは、最低限の構造ルールが表からは見えにくい場所に隠れていただけだったのだと思います。
その「隠れていたルール」を正面から学び直すきっかけをくれたのが、株式会社M’s設計の佐藤実先生が主催する「構造塾」でした。ここで学び始めてから、当社では自社で最低限守るルールを定め、一棟一棟、構造計算を行うようにしています。いつ起こるかわからない大地震が来ても、崩壊しない家をつくる。設計する以上、そこは譲れない一線だと考えています。
構造塾で学んだこと
木造は「自由に作れる」と習います。でも、その自由の裏には、守らなければならないルールが隠れています。
私自身、構造塾で学ぶ前は、そのルールをなんとなく通り過ぎていました。学び直してから、図面の線の一本一本に意味があると分かりました。隠れているものは、探しに行かないと見つかりません。
3 建築基準法の耐震基準は「最低限」のライン
まず土台になるのが建築基準法です。
- 1981年6月:いわゆる「新耐震基準」。震度6強〜7程度の大地震でも、倒壊・崩壊しないことを目標にしています。
- 2000年6月:木造住宅について、地盤に応じた基礎、柱や筋かいの接合金物、壁の配置バランスなどが明確になりました。
- 2025年4月:いわゆる「4号特例」が縮小され、多くの木造2階建て住宅でも構造の審査が行われるようになりました。あわせて、必要な壁の量の基準も見直されています。
ここで知っておいていただきたいのは、建築基準法は「命を守るための最低限の基準」だということです。「倒壊しない」ことが目標であって、「地震のあとも住み続けられる」ことまでは約束していません。
大事な整理
建築基準法は「最低限」です。つまり、法律に適合していればそれで十分、というわけではありません。法律をクリアしたうえで、どこまでを目指すかは、建てる人が選べる部分です。
その選択肢のひとつが、次の章からお話しする住宅性能表示制度と耐震等級です。
4 住宅性能表示制度と「耐震等級」
建築基準法の上に、もう一段の物差しがあります。2000年に始まった住宅性能表示制度です。住宅の性能を共通の基準で評価し、等級で表す仕組みで、その中のひとつが「耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」です。
| 耐震等級 | 想定する地震力 | かんたんに言うと |
|---|---|---|
| 耐震等級1 | 建築基準法と同じレベル | 法律で求められる強さ |
| 耐震等級2 | 等級1の1.25倍 | 法律の1.25倍の地震に耐える |
| 耐震等級3 | 等級1の1.5倍 | 法律の1.5倍の地震に耐える |
ただし、等級は「倒壊・崩壊を防ぐ」ための指標です。数字が大きいほど安心、という単純な話ではなく、何を、どこまで確かめているのかをあわせて見る必要があります。
「等級3=基準法の1.5倍の強さ」と覚えていただければ十分です。消防署や警察署など、災害時の拠点になる建物に求められる水準とほぼ同じです。
セミナーで改めて感じたのは、こうした共通の物差しがあることの価値です。設計者も、施工者も、審査する側も、そしてお施主さんも、同じ言葉で「この家はどのくらい強いのか」を話せる。これがあるから、家の強さを約束できるのだと思います。
5 同じ「等級3」でも、確かめ方が違う
ここからが今回の本題です。
木造2階建ての住宅で強さを確かめる方法は、大きく分けて3つあります。
| 確かめ方 | 主な確認内容 | かんたんに言うと |
|---|---|---|
| 壁量計算(仕様規定) | 必要な壁の量が足りているか、バランスよく配置されているか | 必要な壁の量をざっくり数える |
| 性能表示の計算 | 壁量計算に、床や屋根の強さ、梁の大きさなどのチェックを加えたもの | 壁だけでなく床・屋根・梁まで確認する |
| 許容応力度計算(構造計算) | 柱1本、梁1本、接合部ひとつひとつにかかる力と、それぞれが耐えられるか | 家じゅうの部材に一本ずつ健康診断をする |
ただし、壁量計算や性能表示の計算が「いい加減」というわけではまったくありません。法律で定められた方法で、正しく行われれば意味のある確認です。違いは、確かめている中身の細かさと、見えている力の範囲です。
耐震等級3は、2の方法でも3の方法でも取ることができます。どちらも制度上は同じ「等級3」です。けれど、壁量計算が見ているのは主に「壁の量」、許容応力度計算は「部材一本ずつの力」まで見ています。同じ等級3でも、中身は同じではありません。
6 なぜ「許容応力度計算で等級3」にこだわるのか
当社が新築で許容応力度計算を基本にしている理由は、主に3つです。
① 「どこに、どれだけ力がかかるか」が見えるから
許容応力度計算では、地震や風、建物と家具の重さ、雪などがかかったとき、どの部材にどれだけの力がかかるかを数字で確かめます。壁の量だけでは見えない、梁のたわみや柱の引き抜き、基礎への力まで確認できます。
② 間取りの自由と、強さを両立できるから
大きな吹き抜け、広いLDK、大きな窓。暮らしやすい間取りほど、構造には負担がかかります。一本ずつ計算するからこそ、「ここは補強が必要」「ここは今のままで大丈夫」と、根拠を持って判断できます。
③ 「住み続けられる家」を目指したいから
2016年の熊本地震では、震度7が2回続けて起きました。国土交通省の「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の報告では、対象となった耐震等級3の木造住宅16棟のうち、無被害が87.5%(14棟)で、大きな損傷は見られなかったとされています。ただし、16棟という限られた調査で、すべての住宅の被害を断定するものではありません。それでも、倒壊しないだけでなく、地震のあとも自宅で暮らし続けられること。それが、家族と暮らしを守ることだと考えています。
7 数字の裏にある「設計の考え方」
セミナーで一番心に残ったのは、計算式そのものより、その手前にある考え方でした。

普段、構造計算は専用のソフトを使って行います。けれどこの講座では、あえて基本的な部分を手計算で演習問題として解きました。電卓を叩きながら、力がどの部材からどの部材へ伝わるかを一つずつ追いかけていく。ソフトの中で何が起きているのかを、自分の手で確かめる時間でした。
計算ソフトに数字を入れれば、答えは出ます。けれど、力がどう流れていくか、屋根から柱、柱から基礎、基礎から地盤へと、力のつながりを頭で描けていなければ、本当に強い家にはなりません。計算は、良い設計を「確かめる」道具であって、設計そのものを代わりにしてくれるものではない。そのことを改めて教えられました。
そして、今回のセミナーで一番強く思ったのは、「許容応力度計算をしているから大丈夫」ではなく、「この建物なら大丈夫」と言える設計をしたい、ということです。
許容応力度計算は、たしかに強力な裏付けです。けれど、計算さえ通ればどんな形でもよい、というわけではありません。まず力のかかり方、力の流れ方を意識して形をつくり、そのうえで計算で確かめる。順番は、そこだと思っています。計算は主役ではなく、最後の確認役です。
そしてもうひとつ。設計者と現場の大工が同じ認識を持つことの大切さです。図面どおりに金物が付いていなければ、どんなに精密な計算も意味がありません。設計と施工をつなぐ工務店として、ここは決して手を抜けないところです。
一級建築士大工の墨出し
墨出しは、現場で基準の線を引く作業です。最初の線がずれると、あとの仕事が全部ずれます。設計も同じで、「どう力を受けるか」という最初の線がずれていると、あとから計算でいくら整えても取り返しがつきません。
私は許容応力度計算をした建物の建て方(柱や梁などの構造材を組み立てる作業)に、何度も参加してきました。梁の上に上がると、建物の揺れ方がはっきり違うのがわかります。数値では見えない、体で感じる差です。計算書の一枚と、現場で体に伝わる感覚。その両方を持ちながら家をつくっていきたいと思っています。
8 まとめ|これから家を建てる方に、確認してほしい3つのこと
まとめの前に、打ち合わせでそのまま使える質問を3つ置いておきます。
- 耐震等級はいくつですか?
- その等級は、どの方法で確かめていますか?(壁量計算か、許容応力度計算か)
- 評価書や計算書はもらえますか?
答えに迷う会社が悪い、というわけではありません。ただ、家の強さは完成すると壁の中に隠れて見えなくなります。だからこそ、建てる前に「どう確かめたか」を知っておくことが大切です。
カズからのお願い
「耐震等級は3です」という言葉だけで、安心しないでください。その3が、どうやって確かめられた3なのかまで聞いてみてください。それに答えられる会社は、家の強さを自分の言葉で説明できる会社です。
逆に、聞かれて困る会社が悪いという話でもありません。ただ、質問したときの反応は、その会社がどこまで構造を見ているかを知る、ひとつの手がかりになります。
この記事の要点を、最後にもう一度整理します。
建築基準法は「倒壊しない」ための最低限の基準です。その上に住宅性能表示制度があり、耐震等級3は等級1の1.5倍の地震力に耐える水準として位置づけられています。
そして、同じ「等級3」でも確かめ方はひとつではありません。許容応力度計算は、柱や梁、接合部を一本ずつ確かめる方法です。当社は新築の基本仕様として、こちらを採用しています。
グレー本が改訂されても、変わらないのは「根拠を持って、安全な家をつくる」という基本です。学び続けることも仕事のうち。これからも、目に見えないところこそ丁寧に家づくりをしていきます。
こんなご相談からで大丈夫です
「耐震等級3にしたい。どこまで考えればいい?」
「吹き抜けや大きな窓と、耐震性は両立できますか?」
「うちの間取りで、構造的に無理がないか知りたい」
「評価書や計算書を見て、内容を説明してほしい」
家のこと、暮らしのこと、気軽にご相談ください
「この家で、これからも安心して暮らすには何が要るか」を、一緒に具体化していきましょう。
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■ 新築で、耐震等級3の家を考えている方
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群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、渋川市、北群馬郡で、家のこと、暮らしのことをお伺いしています。
まずは「新築の耐震について相談したい」と、お気軽にご連絡ください。深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜が、大工の立場からも、一級建築士の立場からも、そして子育て中の一人の親としても、正直にお答えします。
一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜
深健工舎/大工工務店2代目・一級建築士
深健工舎は、群馬県前橋市を中心に、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の健康住宅を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛ける、設計事務所併設の大工工務店です。
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参考資料
- 国土交通省|住宅・建築物の耐震化について
- 国土交通省|新築住宅の性能表示制度 かんたんガイド(耐震等級)
- 国土交通省|建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し(4号特例)
- 国土交通省|木造建築物における必要な壁量等の基準の見直し
- 国土交通省|熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書
- 公益財団法人 日本住宅・木材技術センター|木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2025年版)
※法令・制度は改正されることがあります。最新の内容は、国土交通省やお住まいの自治体の公式情報でご確認ください。


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