耐震改修は、高くて、大がかりで、住みながらは無理。そう思われがちです。

でも工法と診断の選び方で、その3つは大きく変わります。群馬県の「木造住宅耐震リフォーム達人塾」で今年も学んできたことを、一級建築士大工の目線でまとめます。

今週のブログ / 既存住宅の耐震改修

「木造住宅耐震リフォーム達人塾」設計演習コースを受講してきました

5回目の受講で見えたこと。精密診断、壊さない耐震改修工法、そして設計と施工が組むということ

一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜/深健工舎

ごあいさつ

こんにちは。

深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。

深健工舎は、群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、渋川市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の健康住宅を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛ける、設計事務所併設の大工工務店です。

快適で住み心地の良い家をつくることを、私たちの仕事の芯にしています。

前回は、台風や地震への備えを書き、古い家は耐震診断を受ける価値があるとお伝えしました。今回はその先の話です。先週、群馬県主催の「木造住宅耐震リフォーム達人塾」対面版・設計演習コースを受講してきました。その報告と、そこで改めて学んだ「住みながら、短い期間で、なるべく安く」耐震改修を進める考え方をお伝えします。

■ このブログで学べること

  1. 達人塾とは。なぜ5回も受講しているのか
  2. 2日目は専用ソフトで「設計の進め方」を学ぶ
  3. 耐震改修を進めるための「7つの鉄則」
  4. 一般診断法と精密診断法の違い
  5. 天井や床を壊さない耐震改修工法
  6. 古民家プロジェクトで感じた「設計と施工が組む」大切さ
  7. 群馬県では26市町村が耐震改修を補助しています
  8. まとめ|諦める前に、まず相談を
  9. 家のこと、暮らしのこと、気軽にご相談ください

1 達人塾とは。なぜ5回も受講しているのか

「木造住宅耐震リフォーム達人塾」は、群馬県が主催し、毎年開かれている設計者・施工者向けの講習会です。名古屋工業大学 高度防災工学研究センターが共催、NPO法人達人塾ねっとが後援しています。県は、比較的安価で工期の短い「低コスト工法」の普及に取り組んでいて、この講習会はその柱です。

対面版は2日間。1日目が施工演習コース、2日目が設計演習コースです。今回、私は設計演習コースを受講しました。

実は、オンライン版も含めて今回で5回目の受講です。理由はひとつで、少しでも短い期間で、安いコストで、住みながら安心して暮らせるように耐震改修ができないか。毎回その答えを少しずつ持ち帰っています。

〔写真:講習会の様子|alt「群馬県 木造住宅耐震リフォーム達人塾 設計演習コース」〕


2 2日目は専用ソフトで「設計の進め方」を学ぶ

去年から、設計演習コースでは達人塾の専用ソフトの体験版を使います。課題の家を題材に、実際に耐震設計をしながらソフトの使い方を学ぶ形式です。

座学で「こういう考え方です」と聞くのと、自分で数値を入れて「この壁を足すと評点がこう変わる」を確かめるのとでは、理解の深さがまったく違います。実際の耐震改修をどう進めればよいかが、現実的に学べる講座になっています。

〔写真:演習の様子、またはソフト画面|alt「耐震改修 精密診断 ソフト 演習」〕


3 耐震改修を進めるための「7つの鉄則」

講座は、達人塾が推奨する「木造住宅の耐震改修促進に向けた7つの鉄則」から始まります。その中から、住まい手の方に特に知っていただきたい2つをご紹介します。

  • 一般診断法ではなく、より精度の高い精密診断法を使う
  • 新築で使う工法ではなく、できるだけ天井や床を壊さず、家主の方の負担を減らせる耐震改修工法を使う

どちらも、目的は同じです。必要な補強を、必要な分だけ、壊す量を減らして行う。それが結果的に、費用と工期と暮らしへの負担を小さくします。次の2章で、それぞれ詳しく見ていきます。


4 一般診断法と精密診断法の違い

耐震診断にはいくつかの方法があります。一般によく使われるのが「一般診断法」、より詳しく調べて計算するのが「精密診断法」です。

診断方法主な確認内容かんたんに言うと
一般診断法壁の量や配置などをもとに、比較的簡易に耐震性を評価分からないところは弱めに見て、安全側に計算する
精密診断法部材や接合部、建物の実際の状態まで踏み込んで評価家の本当の強さを測って、必要な補強量を絞り込む

ただし、精密診断なら必ず補強が少なくなる、というわけではありません。正確に測った結果、弱いところがはっきりすることもあります。大事なのは、補強の根拠が正確になることです。過剰な工事も、足りない工事も避けられます。

一級建築士大工の墨出し

墨出しは、現場で基準の線を引く作業です。最初の線がずれると、そのあとの仕事が全部ずれます。

耐震改修の最初の線は、診断です。線が太すぎれば、壊さなくていい場所まで壊す見積もりになります。補強しすぎないことは手抜きではなく、計算の結果。精密診断は、その線を細く正確に引くための道具だと思っています。


5 天井や床を壊さない耐震改修工法

新築と同じ考え方で補強すると、筋かい(柱の間に斜めに入れる補強材)を梁や土台にしっかり留めるために、天井や床をはがすことになりがちです。すると費用の多くが、補強そのものではなく「壊して、元に戻す」工事にかかります。

達人塾が広めているのは、構造用合板や専用の金物を使い、天井や床をできるだけ壊さずに壁を補強する工法です。工事費が抑えられ、工期が短くなり、騒音やホコリも減るので、住みながらの工事がしやすくなります。

この考え方は全国で使われています。たとえば香川県では、達人塾で扱われるような低コスト工法を県のホームページで紹介し、解体を最小限にすることで工事費や工期を縮減できる、と住民向けに案内しています。

ただし、どの家でもこの工法がそのまま使えるわけではありません。土台がシロアリや湿気で傷んでいれば、そこは開けて直す必要があります。どこまで壊さずに済むかは、診断と現地確認で決まります。


6 古民家プロジェクトで感じた「設計と施工が組む」大切さ

今回は一人ではなく、いま一緒に古民家の耐震改修プロジェクトを進めている設計士さんと参加しました。去年の達人塾で知り合い、声をかけていただいたご縁です。

そして驚いたことに、講義の後半では、その古民家の耐震診断をもとに、講師の方々から直接レクチャーをしていただけました。教科書の課題ではなく、実際に手を入れる家について専門家の意見を聞ける。これほどありがたい機会はありません。

達人塾で学んだこと

この工法は、設計と施工の両方が協力して行う工事です。設計者が「ここに、この補強」と決めても、現場で天井や床を壊さずに納められなければ意味がありません。逆に施工者が納め方を知っていても、計算の根拠がなければ補強は成り立ちません。

設計と施工が、お互いの仕事を理解していないとできない。今回いちばん強く感じたのは、このことでした。

最後には、講師の方々や県の職員の方も交えて意見交換ができました。現場の悩みを制度をつくる側に直接伝え、考えを聞けたことも、とても有意義な時間でした。


7 群馬県では26市町村が耐震改修を補助しています

現在、群馬県内には旧耐震基準の建物が約7万4千戸あります。

群馬県では、35市町村のうち26市町村で耐震改修の補助を行っています。

目安になるのは建てられた時期です。昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けた木造住宅は、旧耐震基準で建てられています。対象や金額、受付期間は市町村ごと・年度ごとに違うので、ここでは金額を書きません。

まずは無料診断から始めて、ご自分の住まいがどのくらい地震に耐えられるのかを知ることから始めてみませんか。多くの市町村で、旧耐震の木造住宅は無料または補助付きで耐震診断を受けられます。

  1. お住まいの市町村に、耐震診断・耐震改修の補助があるか問い合わせる
  2. 診断を受けて、補強が必要か、どれくらい必要かを知る
  3. 補強が必要なら、壊さない工法に対応できるか、設計と施工が連携できるかを確認して相談する

カズからのお願い

「うちは古いから建て替えしかない」と、診断も受けずに諦めないでください。気になる方は、ぜひお住まいの市町村へ問い合わせてみてください。

そして見積もりを取るときは、「どこを壊して、どこを壊さないのか」を聞いてみてください。その説明ができる会社は、補強の根拠も説明できます。


8 まとめ|諦める前に、まず相談を

達人塾は、群馬県が毎年開いている耐震改修の講習会です。私はオンラインも含めて5回受講し、今年は設計演習コースで、専用ソフトを使った耐震設計の進め方を学びました。

柱になる考え方は2つ。精密診断で必要な補強量を正確に出すことと、天井や床をできるだけ壊さない工法で、家主の負担を減らすことです。そしてその工事は、設計と施工が互いを理解して組んで初めて成り立ちます。

県内にはまだ約7万4千戸の旧耐震の建物があり、26市町村が耐震改修を補助しています。まずは無料診断で、わが家がどのくらい地震に耐えられるかを知ることから始めてみませんか。費用や工事の大きさを理由に止まっている方こそ、一度、今の考え方で見直してみてください。

こんなご相談からで大丈夫です

「耐震診断で補強が必要と言われたが、見積もりが高くて止まっている」

「住みながら耐震補強ができるか知りたい」

「古民家を直して住み続けたい」

「うちの市町村に補助があるか分からない」

「この家で、これからも安心して暮らすには何が要るか」を、一緒に具体化していきましょう。

関連する記事もあわせてどうぞ。
→ 台風・水害・地震への備え|大工のチェックリスト


家のこと、暮らしのこと、気軽にご相談ください

■ 耐震診断の結果を受けて、補強を迷っている方

■ 古い家・古民家に住み続けたいと考えている方

■ 耐震とあわせて、断熱や水まわりも直したい方

群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、渋川市、北群馬郡で、家のこと、暮らしのことをお伺いしています。

まずは「耐震改修について相談したい」と、お気軽にご連絡ください。深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜が、大工の立場からも、一級建築士の立場からも、そして子育て中の一人の親としても、正直にお答えします。


一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜

深健工舎は、群馬県前橋市を中心に、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の健康住宅を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛ける、設計事務所併設の大工工務店です。

根拠のある提案と、誠実な対応をお約束します。


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参考資料

※補助の内容・受付状況は市町村ごと・年度ごとに変わります。最新は各市町村の窓口・公式サイトでご確認ください。


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