今週のブログ / 新築住宅の耐震性
新築住宅の耐震性を、等級と計算方法から考える建築基準法の先へ。耐震等級1・2・3、壁量計算、許容応力度等計算、そして在宅避難できる家
一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜/深健工舎・木構造マイスター準一級
こんにちは。
深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。
深健工舎は、群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の健康住宅を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛ける、設計事務所併設の大工工務店です。
快適で住み心地の良い家をつくることを、私たちの仕事の芯にしています。
前回は既存住宅の耐震診断と耐震改修について書きました。今回は新築住宅に絞り、建築基準法と耐震等級、壁量計算と許容応力度等計算の違いを、住まい手の方に届く言葉で整理します。
いつ起こるかわからない地震に備えることは、特別な人だけの仕事ではありません。
新築の計画段階で、家を「命を守る器」だけでなく、電気・水・食事・睡眠をつなぐ生活の拠点として考えておく。避難所へ行かずに済むことを目的にするのではなく、自宅が安全で、地域の支援を受けながら在宅避難できる可能性を高めることが、今回のテーマです。
■ このブログで学べること
- 建築基準法は、耐震性の出発点
- 耐震性は、設計の基準線から始まっている
- 耐震等級1・2・3の違い
- 耐震等級と計算方法を比較する
- なぜ新築で耐震等級3を考えるのか
- 自宅を防災拠点にするための設計
- 在宅避難できる家の条件
- まとめ|地震への備えは、設計の順番で決まる
- 家のこと、暮らしのこと、気軽にご相談ください
1建築基準法は、耐震性の出発点
建築基準法は、建物を建てるときに最低限守るべきルールです。住宅の安全を考えるうえで欠かせませんが、建築基準法に適合していることと、大きな地震のあとも家族が住み続けられることは同じではありません。
基準法は「これだけは守る」という線です。その線を出発点に、住宅性能表示制度の耐震等級や、より詳細な構造計算を組み合わせて、どこまでの耐震性を目指すかを決めます。
大事な整理
2025年4月には、木造建築物の重量化に対応して、必要壁量や柱の小径の算定方法が見直されました。法令は変わります。設計時点の最新基準に適合させることは当然として、住まい手としては「法令を満たしているか」だけでなく、「どの構造検討をしたか」まで確認することをおすすめします。
2耐震性は、設計の基準線から始まっている
私は普段、設計だけでも施工だけでもなく、その間をまたいで仕事をしています。耐震性は、現場で筋違いを入れる段階から始まるのではありません。間取りを考える最初の設計の基準線から始まっています。

一級建築士大工の墨出し
墨出しというのは、現場で基準となる線や位置を出す作業です。最初の線が曖昧だと、その後の柱、壁、建具、設備の位置が少しずつずれていきます。一つ一つは小さなずれでも、積み重なると最後に大きな差になります。
間取りも同じです。何を大事にする家なのか、どこに耐力壁を置くのか、床や屋根から地震の力をどう流すのか。最初の基準がはっきりしていれば、設計も施工も説明もぶれにくくなります。
構造塾で学んだこと
構造塾で学んだ構造計画のルールを、日々の設計に実践しています。耐力壁をただ増やすのではなく、壁の配置バランス、床や屋根の水平構面、柱・梁・接合部・基礎までを一体で考える。しっかりした設計ルールを先に決めることで、構造の安定と経済設計を両立できる間取りをつくることができます。
経済設計とは、必要な性能を落とすことではありません。無理な梁や過度な金物、施工しにくい納まりを避け、構造の弱点を減らしながら、材料と工事の無駄を抑える設計です。
耐震性のために、暮らしやすさを犠牲にする必要はありません。生活動線、採光、収納、将来の使い方を考えながら、構造の基準線を間取りの最初から通しておく。その結果として、住みやすく、つくりやすく、地震にも備えた家になります。
3耐震等級1・2・3の違い
耐震等級は、住宅性能表示制度の中で、地震に対する住宅の強さを段階で示す指標です。数字が大きいほど、想定する地震力に対する耐力の水準が高くなります。
耐震等級1
建築基準法と同程度の耐震性能。大地震で倒壊・崩壊しないための最低限の水準です。
耐震等級2
等級1の1.25倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない程度の水準。長期優良住宅などで求められる場合があります。
耐震等級3
等級1の1.5倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない程度の水準。住宅の中では、より高い耐震性能を目指す選択肢です。
ここで注意したいのは、耐震等級は「地震のあとに必ず無傷」という意味ではないことです。等級が高くても、地盤、施工、家具の転倒、火災、周辺道路の状況によって被害は変わります。また、等級の表示だけでなく、どの計算方法で等級を確認したのかを設計者に尋ねてください。
4耐震等級と計算方法を比較する
ここで、耐震等級1・2・3と、壁量計算・許容応力度等計算の関係を整理します。耐震等級は住宅の耐震性能を示す段階、計算方法はその性能を確認する方法です。この二つは同じものではありません。
| 項目 | 耐震等級1 | 耐震等級2 | 耐震等級3 |
|---|---|---|---|
| 耐震性能の目安 | 建築基準法と同程度 | 等級1の1.25倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない程度 | 等級1の1.5倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない程度 |
| 位置づけ | 法律上の最低限 | 等級1より高い耐震性能 | 住宅で目指せる高い耐震性能 |
| 計算で確認すること | 必要壁量、壁倍率、柱の小径など | 壁量、壁配置、床・屋根、接合部など | 壁量、壁配置、床・屋根、接合部、柱・梁、基礎など |
| 許容応力度等計算 | 必須とは限らない | 採用できる | 採用できる |
耐震等級が高くても、地震後に必ず無傷という意味ではありません。地盤、施工、家具の転倒、火災、周辺環境などによって被害は変わります。等級の数字だけでなく、どの計算方法で、どこまで検討したのかを設計者に確認してください。
| 計算方法 | 主な確認内容 | かんたんに言うと |
|---|---|---|
| 壁量計算 | 必要な耐力壁の量、壁倍率、柱の小径など | 「壁が必要な量あるか」を確認する |
| 性能表示計算 | 耐震等級の判定に必要な壁量、壁配置、床倍率、接合部など | 「住宅性能表示の等級を取れるか」を確認する |
| 許容応力度等計算 | 柱、梁、耐力壁、床、屋根、接合部、基礎などに生じる力と耐力 | 「建物全体と各部材が、地震や風に耐えられるか」を確認する |
確認したい3つ
1.耐震等級はいくつか
2.どの計算方法で確認したか
3.壁・床・接合部・基礎まで検討しているか
壁量計算とは
壁量計算は、建物に必要な耐力壁の量を確認する方法です。耐力壁とは、地震や風による横からの力に抵抗する壁のことです。建築基準法の仕様規定に沿って確認する、基本的な計算方法といえます。
ただし、壁の量を満たしていても、壁の配置が偏っていれば建物がねじれやすくなります。床や屋根から壁へ力が伝わるか、柱や梁、接合部、基礎が力に耐えられるかまで、壁量計算だけで全てを確認するものではありません。
許容応力度等計算とは
許容応力度等計算は、地震や風、建物の重さによって柱・梁・耐力壁・接合部・基礎などに生じる力を計算し、それぞれの部材が耐えられるかを確認する方法です。部材レベルまで検討するため、計画と設計に手間がかかりますが、建物全体の力の流れを詳しく確認できます。
深健工舎では、新築住宅について許容応力度等計算による耐震等級3を基本の考え方にしています。これは「等級3なら絶対安全」という意味ではなく、設計段階で検討する範囲を広げ、家の弱点を減らすための選択です。
5なぜ新築で耐震等級3を考えるのか
新築では、完成後に壁や基礎の中を確認して補強することは簡単ではありません。だからこそ、建てる前に、間取りと構造を同時に考えます。
耐震等級3を目標にすると、耐力壁の量だけでなく、壁の配置バランス、床や屋根の水平構面、柱と梁の接合部、基礎、地盤まで確認する機会が増えます。大切なのは、数字を取ることだけではありません。構造の検討を後回しにせず、設計の早い段階で暮らしと一緒に決めることです。
カズの判断
私は大工として、現場で納まらない構造計画を見てきました。一級建築士として、図面上は成立していても、施工の順番や金物の取り合いで無理が出る計画も見ます。だから、計算書だけでなく、現場でつくれること、検査できること、住まい手に説明できることまで含めて耐震性だと考えています。
国土交通省の熊本地震調査では、調査対象となった耐震等級3の木造住宅16棟のうち、14棟が無被害、2棟が軽微または小破でした。これは重要な調査結果ですが、16棟の調査だけで全ての住宅の被害を断定するものではありません。等級は一つの判断材料として、地盤・設計・施工・維持管理と合わせて考えます。
6自宅を防災拠点にするための設計
地震が起きたとき、自宅が倒壊や火災、浸水の危険がなく、安全を確保できるなら、避難所へ移動せず自宅で過ごす「在宅避難」という選択肢があります。ただし、在宅避難は「避難所へ行かなくてよい」という宣言ではありません。自治体の情報に従い、自宅の安全を確認して判断します。
新築の段階で、自宅を一時的な防災拠点として考えるなら、耐震性に加えて、生活を止めない仕組みを重ねます。
- 構造:大きな地震後も倒壊・崩壊しにくい計画を目指す
- 温熱環境:断熱・気密で、停電時の暑さ寒さへの負担を減らす
- 電気:太陽光発電・蓄電池・非常用電源の組合せを検討する
- 水:飲料水、生活用水、給水車から受け取る方法を準備する
- トイレ:断水・停電時でも使える携帯トイレなどを備える
- 収納:水・食料・衛生用品を取り出しやすく備蓄する
- 家具:家具の転倒・収納物の落下を防ぐ
家を防災拠点にするために、高価な設備を全部そろえる必要はありません。家族の人数、地域のハザード、予算、停電時に必要なものを整理し、優先順位をつけます。
7避難所に行かなくても過ごせる家の条件
在宅避難を選べるのは、第一に自宅と周辺の安全が確保されている場合です。倒壊、焼損、浸水、土砂災害の危険がある場合は、ためらわずに避難します。
| 考えること | 新築時の備え |
|---|---|
| 家が安全か | 耐震等級、許容応力度等計算、地盤、基礎、施工検査を確認 |
| 電気が止まったら | 照明、冷蔵、通信、充電をどう維持するか決める |
| 水とトイレ | 飲料水、生活用水、携帯トイレを家族分備える |
| 情報を受け取れるか | スマートフォン、ラジオ、モバイル電源を準備 |
| 家族が過ごせるか | 温度、睡眠、調理、衛生、薬、乳幼児用品を想定 |
政府広報は、在宅避難に向けて水・食料などを3日から1週間分を目安に備えることを案内しています。備蓄は特別な防災用品だけでなく、普段使うものを少し多めに買い、使った分を補充する方法が続けやすいです。
避難の判断
耐震等級が高い家でも、地域の浸水想定や土砂災害警戒区域に入っている場合があります。地震後は、自治体・気象庁などの情報を確認し、建物の損傷や周辺状況に不安があれば、安全な場所へ避難してください。
8まとめ|まずは、家族の希望を聞かせてください
新築住宅の耐震性は、完成後に付け足すものではありません。土地、間取り、構造計算、基礎、施工、家具、備蓄まで、設計の早い段階からつながっています。
建築基準法は出発点です。耐震等級1・2・3は、目標とする耐震性能を考えるための指標です。壁量計算は必要な耐力壁の量を確認し、許容応力度等計算は柱・梁・接合部・基礎など部材レベルまで確認します。
ただ、「耐震等級3にしたい」と思っても、土地の形、間取り、予算、家族構成によって、考える順番は変わります。最初から完璧な答えを用意する必要はありません。
こんなご相談からで大丈夫です
「耐震等級3にしたいけれど、何から聞けばいいかわからない」
「壁量計算と許容応力度等計算の違いを、図面を見ながら知りたい」
「予算を守りながら、構造の安全性を高めたい」
「子どもが成長しても暮らしやすく、災害時にも過ごせる家にしたい」
深健工舎では、許容応力度等計算による耐震等級3を基本に、断熱・気密、自然素材、維持管理、在宅避難の可能性まで含めて、家族ごとの設計を一緒に考えます。
最初の相談では、土地や図面がまだなくても構いません。気になっていること、家族の暮らし方、予算の考え方を聞かせてください。そこから、必要な性能と設計の基準線を整理します。
地震は、いつ起こるかわかりません。だからこそ、起きてから慌てるのではなく、建てる前に家族の暮らしを想像する。「どんな家なら安心して暮らせるか」を、一緒に具体化していきましょう。
家のこと、暮らしのこと、気軽にご相談ください
「耐震等級について聞きたい」「構造計算の違いを知りたい」「自分たちの予算でどこまでできるか相談したい」――その段階で十分です。
■ 新築を考え始めたばかりの方
■ 耐震等級3と許容応力度等計算を検討したい方
■ 断熱・気密・在宅避難も含めて家づくりを考えたい方
群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、北群馬郡で、家のこと、暮らしのことをお伺いしています。
まずは「耐震性について相談したい」と、お気軽にご連絡ください。深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜が、大工の立場からも、一級建築士の立場からも、そして子育て中の一人の親としても、正直にお答えします。
一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜
深健工舎/大工工務店2代目・一級建築士
構造塾で木構造の耐震性を学ぶ/木構造マイスター準一級
深健工舎は、群馬県前橋市を中心に、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の健康住宅を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛ける、設計事務所併設の大工工務店です。
根拠のある提案と、誠実な対応をお約束します。
参考資料
・国土交通省|木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準
・林野庁|木造住宅の耐震性について
・国土交通省|熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書概要
・政府広報オンライン|防災特集・災害に事前に備える
・内閣府防災|在宅避難者・車中泊避難者の支援



コメントを残す