【2027年問題】エアコンと照明、「まだ使える」が一番危ない

壊れる前に直すのが、職人の仕事です。
深健工舎は群馬県の前橋市を中心に、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の快適な健康住宅を、新築、リノベーション、リフォーム工事で手掛ける、一級建築士事務所併設の大工工務店です。
今日のテーマは、住宅設備の世界で大きな話題になっている「2027年問題」です。
ニュースでは「蛍光灯がなくなる」「エアコンが値上がりする」と取り上げられていますが、現場で図面を引き、墨を打ち、配線を引いている立場から見ると――本当の問題は、もう少し違うところにあります。
「壊れたら買い替える」という時代から、「壊れる前に、墨を打つように更新する」という時代へ。
私たちはその大きな流れの中に、自らの工務店としての立ち位置を、改めて置き直しました。
こんにちは。大工であり、一級建築士であり、第二種電気工事士であり、そして一人の父親でもある、深健工舎のカズです。
今回は電気工事士の目線も入れてお伝えいたします。
子育て真っ最中のパパ目線で、なぜ深健工舎が今、電気設備の「2027年問題」を声を大にしてお伝えするのか、お話しさせてください。
■ 目次
- 「2027年問題」とは何か|3つの変化が同時にやってくる
- なぜ私が電気工事士の資格を取ったのか|ある一人のお客さまの話
- 一級建築士の大工の墨出しは、配線図から始まる|パパ建築士が現場で見ているもの
- エアコンは「動いているから安心」ではない|10年が一つの分かれ目
- 照明器具にも”寿命”がある|日本照明工業会の公式基準
- 梅雨にこそ気をつけたい「トラッキング現象」|子ども部屋の見えないリスク
- パパ職人からのお約束|子育て世代の家を、これから10年も安心に
1.「2027年問題」とは何か|3つの変化が同時にやってくる
「2027年問題」とひと口に申し上げても、実は3つの大きな変化が、同じタイミングで重なることを指しています。
| 時期 | 変化の内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2026年1月〜 | 蛍光ランプ製品の規制が段階的にスタート | 水俣条約 第5回締約国会議(2023年11月) |
| 2027年4月〜 | 家庭用エアコン(壁掛形)の新省エネ基準スタート(15年ぶりの改正) | 資源エネルギー庁 |
| 2027年末まで | 一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入が全面終了 | 経済産業省・環境省 |
つまり、これからの住まいでは――
「壊れたら買い替える、ではなく、壊れる前に、計画的に更新する。」
という考え方への切り替えが、少しずつ必要になっていくのです。
(参考リンク:経済産業省「蛍光灯からLED照明への切り替えはお済みですか?」)
(参考リンク:資源エネルギー庁「2027年4月からエアコンの新たな省エネ基準がスタート」)
2. なぜ私が電気工事士の資格を取ったのか|ある一人のお客さまの話

私は職人の倅(せがれ)として育ち、大工になり、やがて一級建築士の資格を取りました。
そんな私が、もう一歩踏み込んで電気についても深く学ぶようになったのは――ある一人のお客さまとの出会いがきっかけでした。
そのお客さまは、電磁波過敏症(=電気や電磁界に体が敏感に反応してしまう症状)に悩まれている方でした。
「家のどこにいても、なんだか落ち着かないんです」
「室内で過ごしていると、体調が悪くなることがあって……」
「身体全身に電磁波のシャワーを浴びている」
そう打ち明けてくださったご相談を、私はしっかり受け止めたいと思いました。
建築士として、断熱・気密・構造・自然素材については長年学んできました。
けれども、電気の流れ・配線方式・アース(=電気を地面に逃がす安全装置)・電磁界の発生メカニズムについては、もっと深く踏み込まなければ、本当の意味でお客さまに寄り添えない。――そう痛感したのです。
そこで私は、第二種電気工事士の資格を取りました。その後、第一種電気工事士に合格。建築士の図面と、電気工事士の配線図。その両方を、一人の手で描ける職人でありたかったからです。
学びを深めるほどに、こう感じています。
住まいの快適さも、安全も、建物の性能だけではなく、目に見えない「電気設備」が、静かに、けれども大きく支えているのではないでしょうか。
そして今、その学びがもっとも必要とされているのが、まさにこの「2027年問題」なのです。
3. 一級建築士の大工の墨出しは、配線図から始まる|パパ建築士が現場で見ているもの
一級建築士の大工の墨出し(基準)は、柱の位置を決めることから始まる――と、多くの方は思われるかもしれません。
けれども、私の墨出しは、ちょっと違います。
私の墨出しは、配線図を頭の中に重ねるところから始まります。
この壁の中を、どの配線が、どんなふうに通っていくのか。
エアコンの専用回路は、どこから引いてくるのが、ご家族にとっていちばん使いやすく、いちばん安全か。
お子さまが大きくなって、勉強机を置く頃には、どこにコンセントがあれば足りるのか。
分電盤は、将来の太陽光発電やEV(電気自動車)充電にも対応できる容量を、最初から見込んでおけているか。
――それを、柱を立てる前に、墨で打ちます。
電気は、家が建ってから「あとから」考えるものではありません。建てる前に、墨を打つ段階で、もう決まっているのです。
だから、私は建築士と電気工事士、両方の資格を自分の手に握ることにしました。図面を描く人と、配線を引く人が別々だと、どこかで必ず”妥協”が生まれます。子育て世代のお家で、私はその妥協を、なるべく作りたくないのです。
「墨を打つときに、ご家族の30年先を、もう一度頭の中で見直す。」
それが、パパ建築士であり、パパ職人である私の、現場での流儀です。
4. エアコンは「動いているから安心」ではない|10年が一つの分かれ目
エアコンは、10年以上使えることも珍しくありません。
しかし、現場で点検していると、「動いてはいるけれど、本当はもう替え時かもしれません」というケースが、本当に多いのです。
10年以上経過したエアコンでは――
- 電気代が、静かに増えていることがあります(最新機種と比べて、消費電力に大きな差が出ています)
- メーカーの部品供給が終了していて、故障しても修理ができないことがあります
- 本体よりも先に、住宅側の電気設備のほうが寿命を迎えている場合もあります
2027年4月からの新省エネ基準では、現行よりおよそ 13.8〜34.7% の省エネ性能アップが求められます。買い替えのご相談が一気に集中する前に、ぜひ計画的にご検討いただけたらと思います。
■ そして、エアコン本体より心配なのが、住宅側の電気設備です
現場で実際に確認していると、問題があるのはエアコン本体ではなく、住宅側の電気設備であることが、決して少なくありません。
□ エアコン専用回路がない、または延長コードで使用している
ここは、誤解のないように正確にお伝えしておきたいのですが――
- エアコンの専用回路設置は、電気事業法上の「義務」ではありません
- しかし、民間規程である「内線規程」(=電気工事の技術基準。一般社団法人 日本電気協会が発行)に基づき、専用分岐回路の設置が定められています
- さらに、各メーカーの取扱説明書には「専用コンセントを使用してください/延長コードは使用しないでください」と明記されています
つまり、エアコンを延長コードで使うことは、内線規程に反する施工であり、メーカー保証の対象外であり、そして火災のリスクを抱えてしまう行為なのです。
「短い延長コードだから」「ちょっとの間だけだから」も、どうかおやめください。
□ 分電盤が古く、今の電気使用量に対応できていない
新築当時から一度も交換されていない分電盤は、今のご家庭の家電量に対して、容量不足になっていることがあります。
□ コンセントや配線が、経年で劣化している
見えない壁の中で、絶縁性能(=電気が外に漏れないようにする性能)が、静かに落ちていることがあるのです。発熱や漏電の原因となります。
エアコンだけを最新機種に交換しても、住宅側の設備が古いままでは、本来の性能も、安全性も、十分に発揮されない――私たちはそう考えています。
5. 照明器具にも”寿命”がある|日本照明工業会の公式基準
最近、よくいただくのが、
「蛍光灯が切れたので、交換したいんですけど」
というご相談です。しかし実際に現場で確認させていただくと、寿命を迎えているのは”ランプ”ではなく、”照明器具本体”のほうであることも、少なくないのです。
一般社団法人 日本照明工業会(JLMA)の公式見解は、次のとおりです。
| 経過年数 | 区分 | 状態 |
|---|---|---|
| 設置から 8〜10年 | 適正交換時期 | 故障が急に増え始める時期 |
| 設置から 15年 | 耐用の限度 | これ以上の使用は推奨されません |
15年を超えた照明器具では――
- 安定器(=ランプを点灯させる電気部品。古くなると発熱の原因に)の絶縁劣化 → 発煙事故の原因に
- コイルの焼損
- 配線の絶縁性能の低下
- 異常な発熱
が起きている可能性があります。
「ランプだけ交換して、器具はそのまま使い続ける――そのやり方は、JLMA(日本照明工業会)も推奨していないのです。」
■ 蛍光灯の2027年末 ―「切れてから考える」では、間に合いません
2027年末までに、一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入が全面的に終了します(水俣条約に基づく閣議決定)。対象となるのは、直管蛍光灯(FL管・Hf管など)・電球形蛍光灯・コンパクト形蛍光灯の、ほぼすべてです。家庭で使われているタイプは、ほぼ全部だとお考えください。
そして、ここは特に大切なポイントです。
「蛍光灯器具に、LED直管をただ差し替えるだけ、というやり方は、原則NGです。」
蛍光灯器具には「安定器」が組み込まれており、LED直管を取り付けても、そこに電気が流れ続けてしまいます。これが発熱や発火の原因となるため、メーカー各社は「器具ごと、まるごとLEDへ更新する」ことを推奨しています。
(参考リンク:日本照明工業会「照明器具にも耐用の限度があります」)
(参考リンク:NITE「見た目はピカピカ、中身は劣化」)
そして、子育て中のパパ・ママへ、もう一つ。古い蛍光灯のちらつき(フリッカー)は、お子さまの目の疲労や、集中力の低下にも影響するといわれています。
「LED化は、省エネのためだけではなく、お子さまの学びの環境を整える、やさしい投資でもあるのです。」
6. 梅雨にこそ気をつけたい「トラッキング現象」|子ども部屋の見えないリスク

湿度が高くなってくるこの時期、電気工事士として、私が特に気にしているのが――トラッキング現象です。
コンセント周辺に溜まったホコリが、しっとりと湿気を含み、
- プラグの刃の隙間で、微弱な放電が発生する
- 周りの絶縁体が、少しずつ炭化していく
- やがて発熱し、発火に至る
こうした流れで起こる現象です。特に注意していただきたい場所は――
- エアコンのコンセント
- テレビ・冷蔵庫の裏
- 延長コードや電源タップの接続部分
- ベビーベッドの裏、お子さまの学習机の裏
- 寝室のベッドまわり
普段、目に触れない場所ほど、危険が静かに進んでいることがあります。本格的な夏が始まる前に、一度プラグを抜いて、乾いた布でそっとホコリを拭き取ってみてください。そのほんの少しの手間で、ご家族の安全がずいぶんと守られます。
(参考リンク:NITE「コンセントのトラッキング現象による発火」)
7. パパ職人からのお約束|子育て世代の家を、これから10年も安心に
ここまで、長くお付き合いいただきありがとうございます。
私たち深健工舎が考える、本当の「2027年問題」は――
「エアコンが使えなくなる問題でも、蛍光灯がなくなる問題でも、ありません。」
本当の問題は、
「住まいの電気設備が更新の時期を迎えていることに、住んでいるご家族ご自身が、なかなか気づきにくいこと」
なのではないでしょうか。
住まいの性能は、断熱・気密・耐震だけではありません。その土台のところには――
- エアコン
- 照明器具
- 分電盤
- 配線
- アース
といった、電気設備という、もうひとつの大切な”住まいの資産”が、静かに息づいています。
私たち深健工舎は、一級建築士の大工と電気工事士、両方の視点から、
「まだ使えるかどうか、ではなく、これから10年、ご家族が安心して使い続けられるかどうか。」
を基準に、住まいと向き合っています。自然素材で建てる健康住宅も、そこに流れる電気が安全で、穏やかであってこそ、本当の意味で「家族を守る家」になっていくのだと、私たちは信じています。
■ まずは、こんな「最初の一歩」からどうぞ
「うちのエアコン、何年使っているかしら……」
「照明器具、新築のときから一度も替えていないかも……」
「コンセントの裏のホコリ、見たことがなかった……」
そう気づいてくださっただけでも、もう大きな一歩です。ご相談、お待ちしています。
次回のブログでは
次回は、もう一歩踏み込んで――
先日、2026関東ゼミ第1回「空調の基礎を極める講座(基礎編)」で学んできた、
「2027年、エアコンは『省エネ性×快適性』で選ぶ」
というテーマで、
- 高気密・高断熱とエアコン
- 省エネ・快適性
について、建築と電気工事、両方の現場目線で、わかりやすくお話ししていきたいと思います。
壊れる前に、墨を打つ。
2027年に向けた住まいの電気設備を、前橋から。
深健工舎
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
📌 出典・参考資料
- 経済産業省「蛍光灯からLED照明への切り替えはお済みですか?」
- 環境省「一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入は2027年までに廃止されます」
- 資源エネルギー庁「2027年4月からエアコンの新たな省エネ基準がスタート」
- 一般社団法人 日本照明工業会(JLMA)「照明器具にも耐用の限度があります」
- NITE(製品評価技術基盤機構)「コンセントのトラッキング現象による発火」
- 一般社団法人 日本電気協会「内線規程」
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