気づけば、頭の中がオーバーヒートしていました。
建築士会全国大会の前日、環境部会の方々と群馬の建築を巡る見学会で見えた、「建築をトータルで見る」という話を書きます。
今週のブログ / 建築の見方・環境・林業
「場違い」の見学会で学んだこと|建築士会全国大会の前日、群馬の建築を巡って
環境部会、気候風土適応住宅、国産材、そして林業。建築は、ひとつの専門だけでは語れない
一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜/深健工舎
ごあいさつ
こんにちは。
深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。
深健工舎は、群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、渋川市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の健康住宅を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛ける、設計事務所併設の大工工務店です。
快適で住み心地の良い家をつくることを、私たちの仕事の芯にしています。
前回は、地域のイベントや仲間の家から学んだことを書きました。今回は、同じ秋に参加した、もうひとつの学びの場の話です。知り合いのわしず建築設計事務所の鷲頭さんに誘われて、日本建築士会連合会の環境部会の方々と、群馬の建築物を巡る見学会に出かけました。
結論から書くと、「場違いだったけれど、行ってよかった」。それ以上の一言が、まだうまく見つかりません。
■ このブログで学べること
- きっかけ|鷲頭さんの誘いと、全国大会の前日の見学会
- 巡った4か所|幼稚園、古材の住宅、製材所、古民家
- 「環境の専門家」だと思っていたら、そうではなかった
- 移動しながら講義を受けている感覚——学生時代とは違う学び
- 懇親会で聞いた話——群馬の林業と、レーモンドの事務所
- まとめ|場違いの場所で得たもの
- 家のこと、暮らしのこと、気軽にご相談ください
1 きっかけ|鷲頭さんの誘いと、全国大会の前日の見学会
2026年10月16日(金)、第68回 建築士会全国大会 ぐんま大会が、高崎芸術劇場・Gメッセ群馬で開かれました(大会公式サイト)。大会テーマは「絹の国 建築つむぎ 未来へはばたけ」。

その前日、10月15日に、私は群馬の建築物を巡る見学会に参加させてもらいました。主催は日本建築士会連合会の環境部会。誘ってくれたのは、知り合いの鷲頭さんです。
集まったのは、全員が一級建築士の建築家。なかには建築士会の理事や、名誉教授の方もいらっしゃいました。翌日の大会での発表を控えての見学ツアー、という位置づけでもあったそうです。
正直に言うと、私はこの日まで、参加者の顔ぶれも、行き先も知りませんでした。事前情報ゼロで飛び込んだ一日でした。
2 巡った4か所|幼稚園、古材の住宅、製材所、古民家
巡ったのは4か所です。どれも、住宅をつくる人間として、見ておくべき場所ばかりでした。
前橋市の幼稚園——参加メンバーが設計した建物

最初に訪ねたのは、前橋市にある幼稚園。参加メンバーの方が設計された建物です。設計した人がその場にいる建物は、見え方がまったく違います。図面や写真では伝わらない、考えの背景を聞ける。それが、いちばん贅沢な時間なのだと思います。
古材を活かした住宅——「気候風土適応住宅」という申請


次は、一部に以前の建物の古材を再利用した住宅。こちらは「気候風土適応住宅」として申請された建物でした。古い材を活かしながら、現代の性能の議論にもきちんと乗せていく。そのための制度があることを、恥ずかしながらこの日まで詳しく知りませんでした。
大事な整理
気候風土適応住宅とは、地域の気候・風土に応じた特徴を備えた住宅について、所管行政庁が認めることで、省エネ基準のうち外皮基準への適合を要しない、という制度です(建築物省エネ法)。
伝統的な素材や納まりを、性能の議論のなかで活かせるようにした仕組み、と私は理解しました。詳しくは、国土交通省の解説をご覧ください。制度の細かい要件は地域によっても違うので、実際に使う場合は所管行政庁への確認が必要です。
そして、この家は新築です。なのに、通し貫が入っていました。柱を家の内側から貫いて止める、あの横架材です。いまの新築では金物でとめるのが当たり前になっていますから、木の考え方で骨をつくっていることに、まず驚きました。壁も土壁になるそうで、「新築で、ここまでやるのか」と正直に思いました。
話を聞くと、その土壁のための小舞竹網のワークショップもあるとのこと。小舞は、細い竹を組んで下地をつくり、そこに土を塗っていく、昔ながらの壁の下地です。機械で塗る壁しか知らない身には、まるで別世界の話でした。できることなら、参加させていただきたい。そう思っています。新しい家のなかに、昔の手仕事が残っている。その現場に立ち会えるなら、これ以上の勉強はありません。
下仁田町の小井土製材——国産材の現場
3か所目は、下仁田町の製材所、小井圡製材株式会社。国産材を扱い、住宅など建築向けの木材をつくっている会社です。

製材の現場に立つと、「木は、家に届く前から家づくりが始まっている」と感じます。山で育ち、切り出され、乾かされ、加工され、はじめて柱や梁になる。私たちが現場で当たり前に使っている材の、その手前の時間を思いました。
下仁田町の古民家——鷲頭さんと進めている案件

最後は、下仁田町の古民家。鷲頭さんと共に進めている案件で、その現場も一緒に見ていただきました。直すべきところと、残すべきところ。古い建物に向き合うとき、その線引きをどう考えるのか。先輩たちの見方を間近で見られたことが、この日いちばんの収穫だったかもしれません。
3 「環境の専門家」だと思っていたら、そうではなかった
この日、いちばん印象に残ったのは、建物そのものより、見ている人たちの見方でした。
恥ずかしながら、私は最初、「環境部会」という名前から、環境のことだけを専門にしている集まりなのだと思っていました。省エネの話、自然素材の話、そういう分野の方々だと。
けれど、実際はまったく違いました。環境のことも、構造のことも、意匠のことも、施工のことも、法制度のことも。皆さん、全部をトータルで見ている。環境の話をしていても、その背後に必ず、建物全体と地域の暮らしがありました。
これは、私にとってはっとする発見でした。環境を専門にしているから環境だけを見るのではなく、全体をちゃんと見たうえで、環境の視点から語っている。順番が逆なんです。
「建築はトータルで見ることが大切」。この言葉を、頭ではなく、背中で見せてもらった一日でした。
4 移動しながら講義を受けている感覚——学生時代とは違う学び
見学のあいだ、移動のあいだも話が続きます。まるで、教授たちの講義を移動しながら受講しているようでした。
学生時代の講義は、教室で前に座って聞くものでした。今回は、建物の前に立ち、その場で話を聞き、また次の場所へ移動する。同じ「学ぶ」でも、体に入ってくる深さが違います。実際の建物と、それを説明する人の声と、その場の空気がセットになって残るからでしょう。
しかも、私は事前情報なしで参加しています。何の予習もないまま、濃い話を浴び続けました。正直、頭の中がオーバーヒートして、思考を整理するのが大変でした。
5 懇親会で聞いた話——群馬の林業と、レーモンドの事務所

夜の懇親会まで参加させていただきました。そこで驚いたのが、群馬県の林業振興課の方も参加されていたことです。
先生方と、群馬の林業の話で盛り上がっていました。木を家に使うことの手前には、山があり、林業があり、それを支える人たちがいる。私たち工務店は、その一番下流にいるだけなんだ、とあらためて思いました。
国産材を使う、地域の木を使う。言葉にすれば簡単ですが、その裏には、山を育て、切り、運び、製材する人たちの長い時間があります。この日の懇親会で聞いた話は、これから家をつくるときに、必ず思い出すと思います。
もうひとつ、懇親会で驚いたことがあります。お隣に座った参加者の方が、学生時代にレーモンド設計事務所でアルバイトをされていたのです。戦前から日本で建築を手がけた建築家、アントニン・レーモンドの事務所です。そんな経歴の話が、テーブルでふつうに出てくる。この日の集まりが、どれだけ濃い人たちだったのかが分かります。その流れで、話は高崎市の群馬音楽センターに。設計は、そのレーモンドです。
群馬音楽センターは、高崎城址に建つホールです。1961年(昭和36年)、高崎市民の寄付を基に建てられ、群馬交響楽団の定期演奏会の会場にもなっています。打ち放しコンクリートの折板構造が特徴で、DOCOMOMOの近代建築20選にも選ばれた建物です。そんな建物を、私はまだ実物で見たことがありませんでした。名前は知っていても、見ていない。
レーモンドの建築を紹介する展覧会が開かれていたことも知っていましたが、会期はもう終わってしまっていましたが、それなら実物を見に行こうと、あらためて見学に出かけました。その話は、来週のブログで書きます。
6 まとめ|場違いの場所で得たもの
「場違いな場所に参加させてもらった」。それが、この日の正直な感想です。話している内容のすべてを、私は理解できていたとは思えません。
それでも、このご縁を大切にしたいと強く思いました。そして、環境のことを、もっと自分なりに深めていきたい。そう感じた、貴重な一日でした。
建築は、ひとつの専門だけでは語れません。構造も、意匠も、環境も、林業も、暮らしも、ぜんぶつながっています。そのつながりを、自分の目で見て、自分の言葉で説明できる工務店でありたい。そう思っています。
一級建築士大工の墨出し
墨出しは、現場で基準の線を引く作業です。私は大工として現場に立ちますが、いい建築家の話を聞いていると、「この人はどこに基準の線を引いているんだろう」と考えることがあります。
暮らしに置く人、地域に置く人、環境に置く人。基準の線は、人によって違う。だからこそ、その線がどこにあるかを知ると、建物の見え方が変わります。今回の見学会で、私は自分の線を、少し引き直してもらった気がしています。
こんなご相談からで大丈夫です
「古い家を、残しながら直したい」
「地域の木を使った家に興味がある」
「気候風土に合った家づくりを相談したい」
「建築のプロの話を、一度聞いてみたい」
「うちの家は、どう見られているんだろう」——その問いから、一緒に考えていきましょう。
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■ 古民家や既存住宅の改修を相談したい方
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まずは「古民家の改修について相談したい」と、お気軽にご連絡ください。深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜が、大工の立場からも、一級建築士の立場からも、そして子育て中の一人の親としても、正直にお答えします。

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一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜
深健工舎/大工工務店2代目・一級建築士
構造塾で木構造の耐震性を学ぶ
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根拠のある提案と、誠実な対応をお約束します。
参考資料
※制度の要件は地域や時期によって変わることがあります。実際にご検討の際は、国土交通省や所管行政庁の公式情報をご確認ください。


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