民家が国宝に〜私の原点『赤城型民家』との三十年ぶりの再会

令和8年5月22日、文化審議会の答申により、民家として初めての国宝指定が決定したというニュースが流れました。建築に携わる者として、そして自分の原点を改めて振り返るきっかけとなった出来事でした。

民家が初めての国宝へ

今回、国宝に指定されることが決まったのは、兵庫県神戸市にある「箱木家住宅」と、姫路市の「旧古井家住宅」。14〜15世紀に建てられた、我が国現存最古級の民家です。中世における民の生活を今に伝える貴重な遺構として、民家史上初の国宝指定という快挙となりました。

このニュースを聞いた瞬間、私は三十年以上前の自分自身に立ち戻る感覚がありました。

短大時代の卒業論文「赤城型民家の再生・保存」

実は私の短大時代の卒業論文のテーマは、「赤城型民家の再生・保存」でした。群馬特有の蚕室型民家を改装し、いろいろな世代の方が集まれる空間を提案する——そんな内容です。

古民家の特徴でもある太い柱や梁を見ながら、ゆっくりと過ごせる空間。先人たちの技術と暮らしの知恵に、もっと多くの人に触れていただきたい。そんな想いを込めて書き上げた論文でした。あれから三十年以上の月日が流れています。

切りあがった屋根が特徴的な赤城型民家

Facebookでの偶然の出会い

先日、知り合いの方のFacebookの投稿をきっかけに、群馬特有の形をしている赤城型民家に興味を持たれている方がいらっしゃることを知りました。お会いしてお話していると、共通点が次々と出てきて——なんと、その方が短大時代の先輩であることが判明したのです。

赤城型民家の話で盛り上がり、あっという間に時間が過ぎていきました。とても有意義なひと時でした。それと同時に、在学中も卒業してから三十年以上たちますが、赤城型民家について深く話をしたことがなかったことに正直驚きました。自分の中で大切にしてきた想いが、ずっと心の奥で眠っていたのかもしれません。

原点に会いたくて——息子と一緒にぐんま昆虫の森へ

どうしても、自分の原点を再確認したくなりました。先日、群馬県桐生市にある「ぐんま昆虫の森」へ、息子を連れて行ってきました。ここには、移築再現された立派な赤城型民家があるのです。

原点に会いたくて 息子と一緒に

2階部分が切り上がった独特の屋根の形。茅葺きの厚みと勾配。太い柱や梁が静かに語りかけてくる、長い歴史の物語。息子に「これがお父さんが学生のときに研究していた民家だよ」と話しながら、私自身が三十年前の自分と再会しているような、不思議で温かい時間でした。

大工・建築士としての原点

大工工務店の二代目として、一級建築士として、今日まで歩んできた道のり。その原点には、間違いなく短大時代に向き合った「赤城型民家」がありました。民家が国宝になるという歴史的な瞬間に立ち会えたこと、そして偶然の再会から自分の原点を見つめ直せたこと。すべてが繋がっているように感じています。

先人たちが残してくれた知恵と技術を、次の世代へ。父から子へ、子から孫へ。受け継がれていくべき価値があると、改めて信じることができた日でした。これからも、地域に根ざした大工として、伝統建築の良さを伝えていきたいと思います。


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